たびたび話題に上がる、「金融資産ゼロ世帯」。
(例えば、https://news.yahoo.co.jp/byline/fuwaraizo/20220420-00289809 の記事)
単身世帯の33%、二人以上世帯の22%が「金融資産ゼロ」とのこと。
私も先日のNISAの話で使った、みずほ銀行のHPに載っていた記事(https://www.mizuho-sc.com/nisa/about/index.html)でも、「金融資産ゼロ世帯が多い」と書かれていましたけど。
金融資産ゼロって、そんなにカツカツの家庭が多いの?
この統計、怪しくない?
と思うので、その理由などを書いていきます。
「金融資産」の定義があいまい
そもそも、「金融資産ゼロ世帯」というのは、金融広報中央委員会が毎年実施している調査「家計の金融行動に関する世論調査」の調査結果です。
https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/yoron/
「金融資産」の定義は
『定期性預金・普通預金等の区分にかかわらず、運用の為または将来に備えて蓄えている部分とする。
ただし、商・工業や農・林・漁業等の事業のために保有している金融資産や、土地・住宅・貴金属等の実物資産、現金、預貯金で日常的な出し入れ・引落しに備えている部分は除く』
とのこと。
定期預金・株式や投資信託などは「金融資産」になりますね。
で、『日常的な出し入れ・引き落としに備えている部分』とは?
たとえば100万円が手元にあったとして、「これはほとんど貯蓄!」と思う人もいれば、「急な出費があるかもしれないから、これは貯蓄じゃない!」と思う人もいるでしょう。
そのあたり、回答者のさじ加減になってしまうのでは?
「金融資産ゼロ」にフォーカスするなら、そこの基準をキッチリしてほしいですね。
借金を考慮していない・不動産は対象外
金融資産はある、でも借金(主に住宅ローン)もある、という場合、相殺したらマイナスになってしまう人も多いと思います。
でも、ここでは借金は考えず、プラスの金融資産のみを回答しているのです。
いやまあ、持ち家でなく賃貸の人も、ローンの代わりに家賃を払い続けるワケですから、計算に入れる必要がないといえばないのですが。
でも、
○3000万円の家をフルローンで買って、でも定期預金1000万円あります
という人と、
○3000万円の家を買うのに、頭金として1000万円の定期預金を解約して使いました
という人とでは、どちらも「資産マイナス2,000万円」なのにも関わらず、「金融資産1000万円」と「金融資産ゼロ」と、かなりの差がついてしまうのです。
それはどうなんでしょう?
単身と二人以上世帯という区分
調査では「単身」と「二人以上世帯」とで分けていますが、ざっくりしすぎじゃないでしょうか。
「単身」はわかりやすいですが、「二人以上世帯」というのは「夫婦2人」なのか「夫婦と子供」なのか「夫婦と子の夫婦と孫」なのかとか、全員成人で働いているのか、年金暮らしの親にニートの子なのか……
それを一括りにしているのは乱暴な気がします。
また、金額に対しても「一人当たり」にしないと、単身とは比べられないです。
(ゼロの場合には、何人で割ってもゼロですが)
「国民生活基礎調査」
そんブレブレな前提の調査ですが、じゃあ他に信用できる調査がされているのか、というと。
厚生労働省の「国民生活基礎調査」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/index.html)でも「貯蓄のある・なし」について調査しています。
(3年に1度なので、最新の調査結果は2019年)
そこでは「貯蓄」を
『世帯主全員の通常貯金、普通預金を含む預貯金、貯蓄性の生・損保、個人年金保険、株式、株式投資信託、債券』
と定義しています。
預貯金・保険・投資、まるっとで分かりやすいです。
(借金や不動産はやはり除外されてますが)
そしてこの調査で「貯蓄がない」と答えた世帯は13.4%で、だいぶ低め。
無職とか低所得者とかひとり親家庭とかの世帯の割合を考えると、そのぐらいが妥当な数字のような気がします。
まとめ
まとめると。
○「金融資産ゼロ世帯」の数字は当てにならない
○「国民生活基礎調査」も見てみよう
ということでしょうか。
この調査に限らず、「本当?」と思うような記事などは、少し疑って見たほうがいいかもしれませんね。
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